物流倉庫と物流センター、その違いとは？

　物流市場を支えるのに欠かせない要素として、ひとつ挙げられるのが物流施設です。物流の多様化が進み、その施設の在り方もさまざまになっています。今回はそのなかでも、大きく「物流倉庫」と「物流センター」に分けて取り上げました。名称だけで見ると、両者には大きな違いはなさそうに思えます。しかしながら、物流倉庫と物流センターは、ともに物流業界において重要な役割を果たす施設ですが、その機能や目的には明確な違いがあります。そこで今回、両者の違いについて詳しく説明します。


1．物流倉庫の役割と機能
　物流倉庫は、主に商品の保管を目的とした施設です。商品の品質を保ちながら、安全に保管することが求められます。物流倉庫の主な機能は以下の通りです。

①保管：商品の長期保管を行い、在庫管理を徹底します。温度や湿度の管理が必要な商品については、定温倉庫や冷蔵倉庫といった、専用の設備が整えられたものがあります。
②在庫管理：商品の入出庫を管理し、在庫の正確な把握を行います。これにより、在庫切れや過剰在庫を防ぎます。
③セキュリティ：商品の盗難や損傷を防ぐためのセキュリティ対策が施されています。

　物流倉庫は、商品の保管に特化しているため、保管スペースが広く、効率的な在庫管理が可能です。また、長期的な保管が前提でもあるため、商品の品質を維持するための環境管理が徹底されています。

2．物流センターの役割と機能
　物流倉庫は商品の保管が主であると前述しましたが、物流センターは商品の保管だけでなく、流通加工や配送など、物流に関する総合的なサービスを提供する施設といえます。物流センターの主な機能は以下の通りです。

①入荷：商品の受け入れを行い、検品や数量確認を行います。
②保管：物流倉庫と同様に、商品の保管を行いますが、短期間の保管が主です。
③ピッキング：出荷指示に基づき、必要な商品を取り出します。
④流通加工：商品の値付けやラベル貼り、セット組みなど、出荷前の加工を行います。
⑤包装・梱包：商品の破損を防ぐための包装や梱包を行います。
⑥出荷：商品の出荷準備を行い、配送手配を行います。

　物流センターは、商品の入荷から出荷までの一連の流れを一手に引き受けるため、効率的な物流を実現することができます。また、流通加工や包装・梱包などの付加価値サービスを提供することで、顧客満足度を高めることができ、製造業者から小売業者、消費者までのサプライチェーン全体にわたって、物流プロセスを円滑に進める役割を果たしています。

3．物流倉庫と物流センターの違い
　物流倉庫と物流センターの違いは、その機能と目的にあります。物流倉庫は、商品の長期保管を主な目的とし、在庫管理や品質管理に重点を置いています。一方、物流センターは、商品の保管に加えて、流通加工や配送など、物流に関する総合的なサービスを提供することを目的としています。

　以下、物流倉庫と物流センターの違いに焦点をあてた、それぞれのポイントになります。

物流倉庫
・保管スペースが広い：大量の商品を長期間保管するためのスペースが確保されています。
・環境管理が徹底：商品の品質を維持するための温度や湿度の管理が行われています。
・在庫管理が重要：正確な在庫管理を行うことで、在庫切れや過剰在庫を防ぎます。

物流センター
・多機能：商品の入荷から出荷までの一連の流れを一手に引き受けます。
・流通加工：商品の値付けやラベル貼り、セット組みなど、出荷前の加工を行います。
・効率的な物流：商品の迅速な配送を実現するためのシステムが整っています。

　それぞれポイントとして挙げていますが、物流倉庫での保管のクオリティが物流センターにないわけではありません。また、簡易的な流通加工を行う物流倉庫も存在しています。それぞれの良し悪しというよりかは、物流施設を活用するにあたり、何が必要か、何が目的かを考慮して選択するものといえます。


　以上、物流倉庫と物流センター、それぞれの特徴と、違いについてまとめました。前述のとおり、物流倉庫と物流センターは、それぞれの役割に応じて異なる機能を持ち、物流業務を支えています。その目的には明確な違いがあり、物流倉庫は商品の保管を主な目的とし、物流センターは物流に関する総合的なサービスを提供することを目的としています。物流施設を利用する際には、それぞれの違い、また、各施設のメリット・デメリットを把握し、選択する必要があります。
　物流施設を利用している企業は、自社の物流ニーズをしっかりと把握し、そのニーズを満たす要素と、各物流施設の特徴を照らし合わせて、最適な施設を選択し、活用しています。人々の消費活動は多岐にわたり、企業側に求められる物流要素も多様化しています。物流倉庫や物流センターなどの物流施設は、製品やサービスの効率的な流通を支えており、重要な役割を担っています。今後も、多種多様なニーズに合わせ、進化し続けていくことが期待されます。